子宮頸がんワクチン

子宮頸がんにならないためにできること

子宮頸がんの原因は、HPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルス感染ということがわかっていますが、子宮頸がん予防ワクチンの接種と子宮頸がん検診により、予防できるようになりました。子宮頸がんは、初期症状がほとんど無いため、自覚症状が現れる頃にはがんが進行していることも少なくありません。また、最近は若い女性の子宮頸がんが年々増えています。

子宮頸がん発症年代
目次

子宮頸がん予防と早期発見のために

  • 子宮頸がん検診を毎年受ける
  • 子宮頸がん予防ワクチンを接種する

子宮頸がんとは?

子宮の構造

子宮は、赤ちゃんを育てる臓器です。
子宮がんには、子宮の入り口付近(頸部)にできる 「子宮頸(けい)がん」、子宮内にできる 「子宮体がん」の2種類に分類され、それぞれ異なる性質を持っています。

子宮頸がんは、 20代後半〜30代で発生するケースが増えており、 ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因であることがわかっています。HPVの子宮頚部への感染のほとんどは性交渉によるもので、性交渉を経験したことのある女性の80%が感染するといわれています。
子宮頸がんは、子宮の入り口付近(頚部)に発生することが多いため、 婦人科の診察で観察や検査がしやすく、早期に発見されやすいがんです。しかし、早期発見・早期治療の場合は予後のよいがんですが、 進行すると治療が難しいことから、 定期的な検診がとても大切です。

子宮頸がんと子宮体がんの違い

子宮
頸がん
子宮
体がん
自覚
症状
初期は無症状 不正出血
発生
場所
子宮の入り口の子宮頚部 子宮体部の内側にある子宮内膜
発症
年齢
20代後半〜40歳代 50〜60代
主な
原因
ヒトパピローマウイルス(HPV) エストロゲン(女性ホルモン)

子宮頸がんの原因

子宮頸がんが発生する原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)というウイルスに感染することが知られています。HPVは男性にも女性にも関するウイルスで、性交渉により感染し、多くの女性が一生に一度は感染すると言われています。通常はウイルスに感染しても免疫機能により排除されますが、ウイルスが排除されずに長期間感染が続いた場合、細胞ががん化することがあります。

子宮頸がんの進行

子宮頸がんの羅患率と死亡数

子宮頸がんの羅患率(年代別2018年)

年代別にみると、 子宮頸がんの羅患数は20代後半から増え、40代がピークとなっています。20〜30代女性では「子宮頸がん」が1番多いがんで、妊娠・出産年齢のピークが重なることが知られています。

子宮頸がんの羅患率(2018年)

日本では、 毎年約11000人の女性が子宮頸がんと診断され、約2800人が亡くなっています。また、30代までにがんの治療で子宮を失ってしまう(妊娠できなくなってしまう)人も毎年、約1200人います。
一生のうちに子宮頸がんになる人は75人に1人とされ、325人に1人が子宮頸がんで死亡すると推定されています。

出典:平成28年度科学研究費補助金基盤研究(B)(一般)日本人におけるがんの原因・寄与度:最新推計と将来予測
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

子宮頸がん予防ワクチン
(シルガード®9)接種について

HPVワクチンと子宮頸がん検診

子宮頸がん(HPV)予防ワクチンの接種対象者は、 9歳以上の女性です。
接種部位は、上腕または太ももです。(クリニックの経験上、腕よりも太ももを選択された方の方が、接種時、接種後の痛みが少ないという感想が多いです。)
シルガード®9の費用は、自費のみが対象でしたが、令和5年4月からは、以下の年齢の方は公費による助成が始まっています。

公費による無料接種対象者

  • 小学校6年生〜高校1年生相当
  • 平成9年度〜平成18年度生まれ(1997年4月2日〜2007年4月1日)の女性で対象年齢の間に接種を逃した方

シルガード®9と
ガーダシルの違い

HPVワクチンに含まれるウイルスの型

シルガード®9は、ヒトパピローマウイルスの感染を防ぐワクチンです。シルガード®9を接種することで、子宮頸がんの原因となるHPVの16、18、31、33、45、52、58型に加え、尖圭コンジローマの原因となるHPVの6、11型に対する抗体がつくられます。シルガード®9は、これにより子宮頸がんや尖圭コンジローマを予防するワクチンです。

シルガード®9
(9価)
ガーダシル
(4価)
承認 国内承認 国内承認
HPV型 9種類 4種類
接種
対象者
9歳以上の女性 9歳以上の女性
費用 小6〜高1までの女性は無料 ※1 小6〜高1までの女性は無料

※1 平成9年度〜平成18年度生まれ(1997年4月2日〜2007年4月1日)の女性で対象年齢の間に接種を逃した方

HPVには多くの型があり、そのうち20種類程の型が性交渉により感染し、発がんリスクがあると考えられています。シルガード®9は、発がん性の高い9つの型の感染の 『90%以上の子宮頸がん(頸がん前区病変、外陰上皮内腫瘍、膣上皮内腫瘍)と尖圭コンジローマ』を予防できるとされています。

ガーダシルは、上記のうち4つの型の予防しかできないため、国内承認がおりた(2021年2月~発売)シルガード®9は、子宮頸がんの予防に、さらに大きく貢献できるでしょう。

接種にあたっての
注意事項

シルガード®9以外で、ワクチンの接種を近々予定されている方は、シルガード®9接種後、2週間以上はあけてください。

  • 未成年の方は、 保護者の方と同伴での受付のみとさせていただきます。
  • シルガード接種の際、接種前の問診等の準備と接種後の安静と合わせ、 最低1時間は必要となりますので、あらかじめスケジュールに余裕をもってご来院ください。

副作用とHPVワクチン・
シルガードの必要性について

従来のガーダシルでは、65%のカバー率にとどまっていましたが、シルガード®9では子宮頸がんの原因の約90%をカバーできることになりました。しかし、既存のワクチンでは重大な副作用として、過敏症反応(アナフィラキシー、気管支痙攣、蕁麻疹等)、ギランバレー症候群、血小板減少性紫斑病、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)なども報告されております。また、広範囲に広がる痛みや手足の動かしにくさ、不随意運動などを中心とする「多様な症状」が認められました。

しかし、副作用として報告された症状と子宮頸がんワクチンの因果関係は完全には証明されておらず、仮に接種しなかった場合でも、副作用とされる症状は十分に起こりえたことが分かっています。 子宮頸がんワクチンには副作用がないとは断定できませんが、そのリスクは証明されておらず、 接種によって救える命の方が明らかに多いということが世界的に明らかになってきています。また、小児への子宮頸がんのワクチン接種は、世界保健機関(WHO)でも推奨されており、各国の政府が中心となって、世界中でワクチン接種が実施されているようです。

ワクチン接種スケジュールについて

間隔をあけて、同じワクチンを 合計3回接種します。十分な予防効果を得るために、 必ず3回接種してください。
※1年以内に3回の接種を終えることが望ましいとされています。

9歳以上15歳未満の女性において、シルガード®9の2回接種が可能になりました。

HPVワクチン接種スケジュールについて

シルガード®9は、初回接種(1回目)の2ヵ月後に2回目、その6ヵ月後に3回目を接種します。 2回目および3回目の接種が目安の期間に接種できない場合は、事前にご相談ください。
ワクチンの効果を得るために、3回目まできちんと接種してください。

副反応について

シルガード®9の接種により、次のような副反応があらわれることがあります。
異常が認められた場合は、すぐに医師、薬剤師、看護師に相談してください。

一般的にワクチンを接種すると、接種した部位が腫れたり痛むことがあります。これは、体の中でウイルス感染を防御する仕組みが働いているために起こる症状で、通常は数日間程度で治まります。長く続いたり、気になる症状がある場合は医師に相談してください。

特に注意が必要な
副反応

  • アナフィラキシー
    呼吸困難、蕁麻疹などを症状とする重いアレルギー
  • ギラン・バレー症候群
    両手や足の力の入りにくさを症状とする末梢神経の病気
  • 血小板減少性紫斑病
    鼻血や歯茎からの出血、青あざなど
  • 急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
    頭痛、嘔吐、意識の低下などを症状とする脳などの神経の病気

その他の副反応

  • 注射部位の痛み・かゆみ・腫れ・赤み・しこり・内出血
  • 発熱・熱っぽさ・知覚消失・頭痛・感覚鈍麻・悪心
  • 手足の痛み・腹痛・下痢
  • 無力症(まぶたが下がる、物がだぶって見えるなど)・寒気・疲れ・だるさ・血腫・気を失う・体がふらつく・関節の痛み・筋肉痛・嘔吐・リンパ節の腫れや痛み・インフルエンザ・のどの痛み

※上記の副反応は、発生数そのものが少なく、発生頻度も不明です。

子宮頸がん検診について

20歳を過ぎたら受けよう!
子宮頸がん検診

子宮頸がんはワクチンだけでは、100%の予防効果はありません。
子宮頸がんの初期はほとんど無症状のため、シルガード®9の接種とあわせて、 定期的に子宮頸がん検診を受けることで、早期発見・早期治療に繋げてください。

子宮がん検診の詳細はこちら

子宮頸がん検診について

正しく知ろう!子宮頸がん予防ワクチン

日進月歩で医療が進歩し、多くのがん死亡率が低下、平均寿命が延びている中、日本の子宮頸がん患者だけが先進国で唯一増加の一途をたどっているとされています。その原因は、原因は、2013年4月に子宮頸がん予防ワクチンの定期接種*が実現したものの、副作用と推測される事例が発生し、厚生労働省が接種勧奨を差し控えるという発表を行ったためと推測されます。
*定期接種とは国が接種を勧奨し、市町村が接種を行わなければならないワクチンのこと

子宮頸がん予防ワクチンによる副作用という中途半端な報道により、 『子宮頸がん予防ワクチン=危険』というイメージが植え付けられた結果、先進国の中では日本だけ、子宮頸がんの罹患率が増加傾向にあると考えられます。
実際、当院には子宮頸がん予防ワクチンで来院される患者様は毎月多くいらっしゃいます。しかしそれは、院長が英語・中国語・マレーシア語を話せるからであり、接種される約8~9割は外国の方であるのが現状です。
2018年に、【ワクチン接種プログラム対象女子の世界13ヵ国の接種率】のデータが発表され、その中で、日本以外の12ヵ国の子宮頸がんワクチン接種率は、31%~99%に対し、 日本の接種率は0.3%という1%にも満たない驚きの結果が出ています。このことから、日本の接種率が桁違いに低い現状に納得できると思います。
私たちは、子宮頸がんによって多くの助かる命が失われた事実を、いま一度真剣に考えるべきなのかもしれません。
令和5年4月より、ついにシルガード9が定期接種となりました。子宮頸がん予防が当たり前になる日本の未来を心から願っています。

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