妊婦さん向け RSウイルスワクチン
妊娠・出産はお母さんにとって人生の一大イベントです。これから生まれてくる赤ちゃんが健やかに育ってほしいと願うのは当然のことでしょう。
その大切な赤ちゃんを守るために、できることのひとつが RSウイルスワクチン「アブリスボ」 です。
RSウイルスワクチン「アブリスボ」
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接種時期
妊娠28週〜36週
1回の接種で赤ちゃんを生後6か月間守ります。
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料金
33,000円(税込)
任意接種(自費診療)、自治体によって助成を行っている場合があります。
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安全性
大規模臨床試験で確認済み
妊娠経過や赤ちゃんへの悪影響は認められていません。
RSウイルスの基礎知識
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、子どもの重い呼吸器感染症を引き起こす代表的なウイルスです。大人や年長児では風邪程度の症状で済むことが多いですが、新生児や乳児では重症化しやすいため注意が必要です。
特に生後6か月未満の赤ちゃんが感染すると、咳・鼻水・発熱が長引くだけでなく、細気管支炎や肺炎といった下気道炎を起こし、呼吸困難に至ることもあります。重症例では入院して酸素投与や人工呼吸が必要になり、まれに無呼吸発作や急性脳症など命に関わる合併症を起こすこともあります。感染後に気管支喘息へ移行するケースも知られています。
ご存知ですか?RSウイルスの危険性
RSウイルスは、生後6か月未満の赤ちゃんにとって非常に危険な感染症です。
- ほぼ100%:ほとんどの乳幼児が一度は感染
- 12万~14万人:日本では毎年、2歳未満児のうち約12万~14万人が感染
- 25%(約3万人):そのうち約4人に1人が入院を要する重症化
- 合併症のリスク:肺炎や細気管支炎を引き起こし、呼吸困難に至ることもあります
- 治療薬がない:有効な治療薬は存在せず、現在は対症療法のみ
だからこそ、「予防」が最も重要です。
アブリスボワクチンとは
アブリスボは、妊娠中にお母さんが接種することで、生まれてくる赤ちゃんをRSウイルスから守る新しいワクチンです。
妊娠中にお母さんが接種すると、獲得した抗体が胎盤を通して胎児に移行します。生まれた赤ちゃんは、お母さんからもらった抗体のおかげで、生後すぐからRSウイルスに感染しにくくなり、たとえ感染しても重症化を防ぐことができます。
米国・欧州でも2023年に承認され、日本では2024年5月から使用可能になった最新のワクチンです。日本小児科学会や日本産科婦人科学会も推奨しています。
ワクチンの効果
臨床試験で証明された予防効果
- 生後90日以内:約81.8%の重症肺炎予防効果
- 生後180日(6か月)まで:約69.4%の予防効果を持続
- 入院や医療機関受診を要するRSウイルス関連疾患を約50%減少
世界18か国で7,000人の妊婦さんを対象とした大規模臨床試験により、安全性と有効性が確認されています。
※注意:ワクチンを接種すれば100%感染を防げるわけではありませんが、感染しても重症化しにくくなります。
これは、インフルエンザワクチンなどと同様です。
安全性について
妊婦さんが最も気になる「安全性」について、大規模試験で十分に検証されています。
- 早産の頻度:接種群と非接種群で差なし
- 赤ちゃんの先天異常(奇形):発生率に有意差なし
- 赤ちゃんの健康:少なくとも生後24か月まで重篤な健康被害の増加は確認されていない
現時点で、長期的なリスクについて大きな懸念は報告されていません。
妊娠中に安心して接種できるワクチンとして、国際的にも認められています。
主な副反応
- 局所反応:注射部位の痛み(約41%)、発赤(7%)、腫れ(6%)
- 全身反応:頭痛(31%)、筋肉痛(27%)
- 多くは接種後2~3日以内に消失する軽微な症状です
当院では接種後、院内で一定時間安静に過ごしていただき、体調変化がないか確認いたします。
万一アレルギー反応などが起きた場合も、すぐに対応できる体制を整えています。
接種することで得られるメリット
- 生後すぐから守られる安心感
赤ちゃんが最も重症化しやすい生後数か月間を抗体でカバー。
出産直後の赤ちゃん自身はワクチンを接種できませんが、お母さんが代わりに免疫をプレゼントできます。 - 重症化・入院リスクの大幅低減
赤ちゃんの入院リスクが約70%減少。
万一感染しても重症化しにくくなるため、入院看護や心配事の負担が軽減されます。 - すべての赤ちゃんに予防効果
従来の抗体注射は早産児や基礎疾患のある乳児など対象が限定されていましたが、妊娠中の接種なら生まれてくる赤ちゃん全員に抗体を移行できます。 - お母さん自身も守られる
お母さん自身もRSウイルスに対する免疫が高まり、感染リスクが減少。
結果的に赤ちゃんへの感染機会を減らすことにつながります。 - 1回の接種でOK
妊娠中の限られた時期に一度受ければよく、毎月病院で注射を打ち続ける必要はありません。
手間が少なく、手軽に赤ちゃんを守れます。
よくあるご質問
当院での接種について
希咲クリニックでは、RSウイルスワクチン(アブリスボ) の接種を行っています。
妊婦健診で当院に通院中の方は、健診時にそのまま接種可能です。
接種の流れ
- 当院では妊娠28週頃を接種の目安としています。原則28週までに接種希望をお申し出ください。
※28週以降のお申し出でも接種可能ですが、ワクチン確保のため数日お待ちいただく場合があります。
大切な赤ちゃんを守るための準備ですので、気になる方はどうぞお早めにスタッフまでご相談ください。 - 健診時にそのまま接種可能です。
- 接種後は院内で一定時間安静にしていただき、経過観察を行います。
ご不明な点がありましたら、遠慮なくスタッフまでお尋ねください。
大切なお腹の赤ちゃんをRSウイルスから守るためにできる新しい選択肢として、ぜひRSウイルスワクチン「アブリスボ」の接種をご検討ください。
当院スタッフ一同、安心・安全な接種体制で皆様のご希望に心を込めて対応いたします。